(4)10 年間の自然再生事業の取り組みと成果

 協議会の発足時、構成員は個人56 名、36 団体、11 関係行政機関および14 のオブザーバーで始まりました。また具体的な事業について報告・議論する6 小委員会が作られ、それぞれ活動を開始しました。協議会には、10 年間100 以上の個人・団体数が参加しつづけており、全国的にも最大規模の多くの関係者が参加する場となりました(別資料69 ページ参照)。釧路湿原は「自然再生」の取り組みの象徴的な場所として内外に広く知られました。
 この枠組みの中で10 年間で8 つの実施計画が作られました。茅沼地区では、2010 年に北海道開発局(釧路開発建設部)が直線化された河川を元の蛇行河川に復元する事業を実施し、蛇行復元区間の氾濫原が拡大し湿原植生面積が増えたこと、川の流れの早さや深さなどが多様化し、直線区間と比較して魚類等の種類・個体数が増加したこと、湿原景観が復元したこと、洪水時の土砂堆積による下流への土砂が減少したことが確認されています(【事例ぁ曄法
久著呂川地区では、流域内の開発によって湿原へ流入する土砂量が増加し、以前よりも多くの土砂が湿原内に堆積されることによる湿原生態系への影響が懸念されていました。北海道開発局(釧路開発建設部)、北海道(釧路総合振興局釧路建設管理部)などは「土砂流入対策実施計画〔久著呂川〕」を策定し、河道の安定化対策、沈砂池、水辺林・緩衝帯、土砂調整地の整備等により、湿原内部へ流入・堆積する土砂を4 割軽減する目標を設定し、事業を実施しています(【事例】【事例】)。2013 年までに実施した対策により、湿原内部へ流入する土砂が軽減したことが確認されています。
達古武地区では、カラマツの一斉造林が進み、生態系の質の低下が課題となっていた湿原や湖沼に隣接する丘陵地において、環境省(釧路自然環境事務所)が2005 年から地域本来の落葉広葉樹林を取り戻す事業を実施しています(【事例ァ曄法また、NPO 法人トラストサルン釧路は、過去の開発行為でササ地になるなどの荒廃地した丘陵地での自然林再生に取り組んでおり、2003 年に苗畑を設置してから、これまで約4 万本の苗木を植林しています(【事例Α曄法いずれも、遺伝的かく乱を防ぐため、植栽する苗はすべて地域産の種子を採取して育てているため、膨大な手間と時間を要していますが、長期的には大きな成果が期待されています。また、達古武湖では、周辺部の開発によって近年水質が富栄養化し、水草のヒシが急増して、他の水生植物に影響与えるなど本来の自然環境からの劣化が確認されていることから、環境省(釧路自然環境事務所)が「達古武湖自然再生事業実施計画」を作成し、その原因の一つである、過去に埋設された堆積糞尿の撤去を進める事業を実施しています(【事例】)。
 その他にも、幌呂地区や広里地区においても湿原再生事業の取り組みが始まっています。いまだ確立されていない湿原再生手法を検討するための現地実験や、ハンノキ林急拡大した原因解明についての調査等が実施されており、釧路湿原に適した再生手法や土砂流入以外のハンノキ林の増加原因が明らかになりつつあります(【事例 曄攣例◆曄法M詈銘篭茲任蓮⊃∈呂気譴織肇疋泪弔枯死してササ地となった区域の森林再生事業が実施されています(【事例А曄法
市民参加と環境教育促進については、2005 年6 月に市民参加と環境教育促進のための5カ年計画「釧路湿原自然再生普及行動計画」※2を策定し、毎年度の具体的な取り組みを「ワンダグリンダ・プロジェクト」※3として公募、支援してきました。そこでは、流域圏外を含む様々な主体による、釧路湿原の保全や利活用に関わる多様な活動が展開され、湿原と市民の接点や参加・体験の機会は広がってきています。
 2014 年には鶴居村で、協議会、役場、観光協会の協働により自然再生とツーリズムをつなぐ流域ガイドマップが作成されました。復元された旧川はカヌーの好コースとして活用されており、湿原の価値や保全・再生による地域の利益は少しづつ知られるようになってきています(【事例】)。

※2 釧路湿原の自然再生を環境教育や市民参加とともに進めていくための5 年ごとの行動計画です。自然再生推進法に基づく「実施計画」ではありませんが、実施計画に準ずる計画に位置づけ、協議会として推進しています。
※3 「釧路湿原自然再生普及行動計画」の毎年度の具体的な取り組みの愛称です。「wonderful」(すばらしい)、「Only one」(ひとつの)、「Green だ!」をあわせた造語で、第1 期行動計画を開始した2005 年に参加者からの公募で採択されました。第3 期行動計画(2015 〜 19 年)からは、新たに地域と自然再生をつなぐ『釧路湿原の応援団』として位置づけ、活動を広げていくこととしています。

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