(2)自然再生を実施する上での原則

 ここでは、自然再生に取り組む上で重要な原則を示します。全ての取り組みは、この原則に従って実施されます。

 \限峽呂里弔覆りがある流域全体を対象に考える(流域視点の原則)

 自然の抱える問題を解決するためには、社会的な単位にとらわれずに方針を立てていく必要があります。特に湿原生態系は複雑な結びつきで、湿原−河川−森林と広い範囲に関わりを持ちます。今までは、個々に取り組んできましたが、この自然再生ではまず流域全体で現状把握を行ない、各対策の成果も流域全体で評価する必要があります。

◆〇弔気譴深然の保全を優先し、できるだけ自然の復元力にゆだねて、自律的な自然の回復を目指す (受動的再生の原則)(3)

自然再生の本質は、人間が自然に対して能動的な「創生」「修復」より、自然に対して受動的な「保全」「回復」にあります。第一に残された良好な自然を守ることを優先し、その上で自然の復元や修復を図っていくべきです。自然に対して「何もしない」ことも、大切な選択であると捉える必要があります。また、自然の力にゆだねる方法(受動的方法)があるならば、それを優先すべきです。

保全を優先するという考え方はラムサール条約の勧告の中でも述べられています。これは〔い隻垈鎮里壁分がある自然を人間がつくることは難しく、おこがましい、⊆蠅鬚けない手法の方がコストが低くて済む、という二つの理由から保全の方が手法として優れていることを示しています。

また、自然の劣化が著しく、はじめは能動的な手法が必要な場合でも、徐々に自然の回復力にゆだねるようにします。最終的には自然が自らの力で維持する自律的な状態を目指すことを基本とすべきです。

(3)自然再生事業に対しては「形を変えた公共工事ではないか」という批判があります。そうではないことを示すため、「まずは残された自然を守ることから考えるのだ」ということを強調している原則です。

 科学的な知見を集積し、現状を把握する (現状の科学的な把握)

 生態系は多様な要素と関係からなる複雑な存在で、絶えず変化を続けています。この生態系については、いまだ十分に分かっていないため、科学的な知見を集積しながら進めていくことが重要です。特に、再生を行なう対象地の現状について様々な視点から情報を収集して、事業による変化の予測をたてることが重要です。希少な生物や地域産業への影響については、特に丁寧に把握することが重要です。

ぁ…拘的な視野で具体的な目標を設定する (明確な目標設定)

 自然再生は短期間ではなかなか成果が出ないため、長期的な視野で取り組む必要があります。しかし、明確で客観的な目標を設定しなければ方向性や手法が定まりません。生態系の変遷を踏まえて、各取り組みについて具体的な目標を設定する必要があります。

ァヽ道楮は結果を評価・検証しながら、補正して対応できるように運用する (順応的管理(4)の原則)

 具体的な取り組み方法を決めるためには、その結果について科学的な予測を行なう必要があります。そして実施し始めた後にも、慎重で丁寧に取り組み、その結果をモニタリング(定期的な検証)する必要があります。さらに目標に照らして評価しながら、取り組みの修正を行なうことが重要です。そのために取り組む手法は、修正が困難な手法は極力避け、後でその成果を客観的に評価・修正できるようにします。

(4) 「順応的管理adaptive management」は実験的管理とも呼ばれ、実際に運用しながら修正をしていく実施方法を指しています。「見直し」を前提とするため柔軟な取り組みが可能となりますが、客観的でしっかりとした見直しを行なわないと、「いい加減な」管理になってしまう危険があります。

良好で多様性のある自然を取り戻すという目標のために、修復も選択肢に含める (自然の保全・復元と修復)(5)

 自然再生の目的は、良好で多様性のある自然をなるべく取り戻すことです。その目標に少しでも近づけるための様々な工夫や取り組みも「再生」の一つとして重要です。過去の状態を完全に復元することだけを目指すのではなく、自然の良好な機能をとりもどすこと(修復)も検討する必要があります。土地利用や産業との関わりで復元が困難な地域でも、自然を取り戻すために可能な取り組みをすることが大切です。

(5)過去が良かったからといって、全てを過去に戻すのは不可能で。ここでは、質を高めるための工夫も「再生」の一つで、積極的に取り組みましょうと述べています。

地域の産業や治水・利水と自然環境の効果的両立を目指す (地域産業・治水との効果的両立)(6)

 湿原周辺の流域では、農林業をはじめとするさまざまな地域産業が営まれています。これらの産業を維持・活性化することと両立するように自然再生は進めていかなければなりません。そのために、再生の対象地を検討するときには、すでに産業に不適であることが明らかとなっている場所などから考えていく必要があります。

 一方で、希少な自然環境を残すために特に重要な地点については、優先的に再生を検討する必要があります。地域産業を営んでいる地域においても、周辺の環境に配慮する工夫をすることで、湿原の保全と産業の活性化の両立を図ることが重要です。

 河川については、治水・利水のための管理を行なってきたことを踏まえつつ、本来のダイナミズムを持った状態の再生を目指す必要があります。

 自然を利用する農業・漁業及び観光業のような地域産業の持続的な発展を目指し、地域の価値を高めることも自然再生の目的の一つです。

(6) ここでは、地域産業に配慮した形で進めることの重要性にふれ、産業に不適な場所を再生するのが基本であることを示しました。「効果的」という言葉には、地域産業・環境保全それぞれに有意義なように進めていきましょうという願いを込めています。

地域の多様な人々が連携・参画し、地域の将来をともに考える(多様な主体の参加の原則)

 自然環境の課題は全ての人々との関わりを持ちますが、地域社会の役割は重要です。地域の資産である湿原は、(原則Г里燭瓩砲癲肪楼茲琉媚廚亡陲鼎保全・再生される必要があります。このため、自然再生は事業の計画段階から実施、評価に至るまで、流域の全ての利害関係者の参画の下に進めていくことが求められます。

 特に、自然再生の効果は長期間かけて観察・検証する必要があることから、地域の多様な人々が関心を持ってモニタリングに参加し、状況や評価を専門家と共有しながら地域の将来像とともに自然再生を考えていくことが望まれます。同時に、地域の主体が自ら取り組む自然再生や、地域内外からの直接・間接の参加を広げるため、参加への支援や機会づくりを進めていくことが必要です。  

 
十分な情報の公開と説明、対象に応じた効果的な情報発信を行なう (情報共有の原則)

 自然再生には、関わる多くの人々の理解と合意形成が不可欠であり、湿原の現状と保全・再生の必要性、計画・実施内容、成果・課題等、関連する情報は、検討過程も含めて迅速に公開し、広く社会と共有する必要があります。

 自然再生に関する情報は専門用語やデータが多く、難解なものとなりがちです。このため、単に計画・報告書や会議資料等を公開するだけではなく、わかりやすい説明、対象に応じた効果的な発信手法の選択等が必要です。

 さらに、情報公開・提供だけではなく、地域や市民との相互の情報の交流(コミュニケーション)を積極的に進めていくことが大切です。

地域の自然環境と、地域の産業・くらしとの関わりに対する理解を深める (環境教育(7)の推進)(8)

 自然再生を進めるためには、湿原やそこにすむ生きものたちの生態、その経済・社会的な価値が広く認識され、経済活動や日々のくらしの中で行動や選択に活かされるようになることを目指す必要があります。

 このための環境教育が、学校および地域社会において、対象者や学びの段階に応じて展開されることが重要であり、担い手の育成を進めるとともに、取り組み主体や学習者を支援していくことが必要です。

 さまざまな取り組みが試行的に実践される自然再生事業は、環境教育の絶好の教材であり、原則Г筝饗Л┐里燭瓩砲盂萢僂期待されます。

(7) ここでいう「環境教育」は、学校で行われる環境学習だけではなく、公共施設や市民活動、職場、家庭など、広く地域のさまざまな場面で行われる学習や体験の機会を含みます。また、自然や環境問題の知識を習得するだけではなく、それらと社会、経済、文化とのつながりについて気づき、理解を深め、様々な参加、行動につなげていく活動までを幅広く含みます。ESD(持続可能な開発のための教育)と同等の教育を意味しています。

(8) 自然再生推進法では、自然環境学習の推進の必要性に言及しています。ここでも、地域の自然環境や産業への理解を深める取り組みの重要性についてふれました。

 

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