1 湿原・湖沼生態系の保全・再生(2)

 この施策では、湿原の生態系と希少種を良好な状態で維持するため、湿原の保全・再生を図ります(3)。また、湿原特有の野生生物を保全するため、外来生物が及ぼす影響を減らします。

(2) ここでいう「保全・再生」は、本来「再生」という言葉にまとめられます。ただ、施策1〜3(生物系)では「保全を含んでいない」と誤解されやすいので、あえてこう表記しました。
(3) この施策は、湿原そのものの再生を扱いますが、施策は生物分野にしぼるようにしています(物理・化学系は施策4・5で扱うため)。

(1) 現況と課題

 釧路川流域では、1960 年代から都市開発・農地開発が進み、湿原とその周辺部においても、宅地・農地造成、道路整備、河川改修など湿原開発がなされてきました。その結果、湿原面積が直接的に減少した(図5-1)ほか、湿原内へ多くの土砂や栄養塩が流入し、ハンノキ林が拡大するなど(図5-2)、質的にも急速に変化してきました。これらの影響を受けて、湿原特有の希少な野生生物※の中には、個体数や分布面積が減少している種も見られます(図5-3・図5-4)。

※ 釧路湿原では、環境省・北海道のレッドデータブックに掲載されている絶滅の危険がある種として、植物ではカラフトノダイオウ・ハナタネツケバナ・カラフトグワイなど73 種、哺乳類ではチチブコウモリなど2種、鳥類ではタンチョウ・オジロワシ・クマゲラなど29 種、両生類はキタサンショウウオ1種、魚類ではイトウ・エゾトミヨなど14 種が挙げられています(高橋・高嶋1993、橋本1997 など)


(※クリックすると拡大します)


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 また、1930 年代に食用・エサ用として摩周湖に持ち込まれたウチダザリガニ、1950 年代に本格的な飼育の始まったミンクなどの外来生物が湿原内で繁殖し(図5-5)、その影響で在来生物が減少するなど、湿原生態系のバランスが崩れ始めています。

(2) 本施策において達成すべき目標、目指す状態(成果目標)

以下の5 つの目標ごとに具体的な施策を展開します。

  1. 良好な湿原環境を有している区域の現状面積が維持されるように、湿原を保全します。
  2. 湿原特有の野生生物が安定して生息・生育できるような環境を保全・復元します。
  3. 湖沼の野生生物が安定して生息・生育できるような水質や水量を保全・復元します。
  4. 過去に湿原であって、現在は産業利用されていない湿原周辺の未利用地等を、「湿原」や「湿原と社会経済活動との緩衝帯」として回復・復元します。
  5. 湿原生態系への悪影響が懸念される外来生物等の影響を低減することを目指します。
(3) 実施すべき内容・手法(行為目標)
  1. 良好な湿原の保全
    • ・保護区の設定や管理を適切に実施する
    • ・保全対象地の現況を把握する調査を実施する
  2. 湿原特有の野生生物の生息環境の保全・復元
    • ・絶滅の危険性を減らすための保全策を構築する
    • ・保全対象地の種の現況を把握する調査を実施する
  3. 湖沼の野生生物の生息環境の保全・復元
    • ・水質や水量を保つための保全策を構築する
    • ・保全対象の種の現況を把握する調査を実施する
  4. 湿原周辺の未利用地等の回復・復元
    • ・地下水位の回復・復元、冠水頻度の回復・復元  → 2河川再生、4 水循環再生と連携
  5. 外来生物の管理手法の確立
    • ・外来生物の分布域の抑制をはかる
    • ・外来生物の利用を抑制し、逸出を防止する
    • ・外来生物の分布の現況等を把握する調査を実施する
(4) 成果の評価項目・評価手法の例
  1. [氷イ兵掌兇諒歔
    • ・以下の評価項目を参照

  2. 湿原特有の野生生物の生息環境の保全・復元
    • ・湿原構成種の現存量・種組成の回復・復元状況(目標となる対象区・モデルとの比較)
    • ・指標種・希少種の個体数・分布面積の安定化(対象種の分布状況)
  3. 湖沼の野生生物の生息環境の保全・復元
    • ・周辺地域との土砂・栄養塩の収支
    • ・指標種・希少種の個体数・分布面積の安定化(対象種の分布状況)
  4. 湿原周辺の未利用地等の回復・復元
    • ・地下水位や冠水頻度の回復・復元状況(目標となる対象区・モデルとの比較)
  5. 外来生物の管理手法の確立
    • ・対象外来生物の分布面積の抑制

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