3 湿原・河川と連続した丘陵地の森林の保全・再生

 この施策では、湿原への土砂の流入を軽減し、水環境を保全するために、流域内の森林をさまざまな方法で再生します。また、湿原や河川ともつながりを持つ、地域本来の豊かな森林生態系を再生します。

(1) 現況と課題

 釧路湿原の流域における森林施業は明治初期から行われ、戦前は枕木・用材・坑木・薪炭材・パルプ原木として、戦中は軍の陣地用材として大量に伐採され、原生的な森林はほとんど姿を消してしまいました。

 さらに1960 年代以降は、広葉樹を伐採してカラマツなどの針葉樹を積極的に植林することが推奨され、人工林の比率が高まりました(現在約40%、図5-7・図5-8)。また農地開発や宅地開発によっても森林面積は少しずつ減少しています(ここ50 年で約20%)。現在、湿原周辺の森林は民有林が多く(図5-9)、度重なる伐採で小径木化した広葉樹林と、造林から40 年程度経たカラマツ人工林が多くなっています(図5-10)。

 産業利用のために森林が切り開かれた場所の中には、1990 年代のバブル期までのゴルフ場開発などのために買収されたものの開発申請後未着手の場所が残されています。また、土砂採取や産業廃棄物投棄のために裸地状態で利用されている場所も多くあります。

 このように過去の経済活動により釧路湿原流域に占める森林面積は減少しており、湿原への土砂流入量の増加、雨水の流入量の不安定化、湧水の消滅といったことが懸念されます。また、大径木のある自然林が減少したことや、単一樹種の一斉造林地が増加したことなどから、生態系の質の低下も課題となっています。造林地では十分な維持管理ができずに、森林が荒廃していくことも懸念されています。

(2) 本施策において達成すべき目標、目指す状態(成果目標)

 以下の4 つの目標ごとに具体的な施策を展開します。

  1. 現在良好な機能を有している森林が維持されるように保全します。
  2. 過去に森林が失われて裸地等になり、土砂流出などで湿原や河川に影響を与えるおそれのある場所に、森林を回復・復元します。
  3. 無立木地や造林地で、荒廃していたり効果的な産業利用が行なわれていない場所を、地域本来の森林生態系を取り戻すように回復・復元・修復します。
  4. 木材生産が行なわれている森林では、生態系の保全や水循環、土砂流出防止に配慮した森林施業が実施されるようにします。
(3) 実施すべき内容・手法(行為目標)

 森林の再生は広範囲な地域にわたり、土地の所有形態・利用形態も多様です。計画の策定・手法の検討にあたっては、客観的なデータを集積して、流域単位での検討を進めることが重要です。

 また、森林の復元については、市民グループや地方自治体での取り組みも多く、今後も市民参加が大きく期待できることから、これらの取り組みと連携し、さらに市民が参加しやすい形態にする必要があります。

  1. 良好な機能を有している森林の保全
    • ・自然の姿に近い森林は、保護林・保安林などとして位置づけ、維持されるようにする
    • ・関係機関・関係団体やナショナルトラスト運動などによる森林の買い上げと保全を進める
    • ・保全している森林の機能や生態系についての情報を把握し、広く共有する
  2. 裸地等の森林の回復・復元
    • ・廃道となった作業道や利用されていない裸地における土砂流出防止対策を進める→ 5 土砂流入抑制と連携
    • ・過去の人為的な影響により森林の回復が遅れている場所では、阻害している要因(動物による過剰な被食、表土の硬質化、乾燥、外来植物の繁茂など)に対して対策を講ずる
    • ・自然に森林が回復することが困難な場所には、播種・植栽を行なう。その場合は、本来生育していた樹種を用い、遺伝的攪乱を防ぐために地元の種苗を用いることを基本とする
  3. 無立木地や造林地における森林生態系の回復・復元・修復
     ササ草地やカラマツ人工林なども、土砂流出の軽減などの機能を果たしていますが、可能な場所については、地域本来の良好な森林を目指す工夫が考えられます。
    • ・渓流や湿原に隣接する場所は連続した生態系として重要なため、積極的に地域本来の森林への復元を進める → 1 湿原再生、2 河川再生、4 水循環再生と連携
    • ・ 現在の植生が急激に変化することによる悪影響に考慮し、復元・修復は徐々に進める。復元にあたっては△汎瑛佑亮衙,鬚箸
  4. 生産が行なわれている森林での配慮・修復
    • ・生産を行なっている人工林についても、下層植生の繁茂を促すため積極的に間伐を行なうなど、森林生態系に配慮した施業を実施する
    • ・作業道からの土砂流出を軽減するような対策をとる。新たに作業道を開設する場合は、計画的な配置や排水対策等に努める → 5 土砂流入抑制と連携
    • ・民間の森林所有者とも連携して、湿原への負荷を減らし森林生態系の質を高めるような森づくりを進めていく
(4) 成果の評価項目・評価手法の例
  1. 良好な機能を有している森林の保全
    • ・以下の評価項目を参照

  2. 裸地等の森林の回復・復元
    • ・再生した森林の樹木の平均胸高直径・平均樹高・面積当たりの本数・成長量・種組成
  3. 無立木地や造林地における森林生態系の回復・復元・修復
    • ・再生した森林の指標になり得る野生生物の個体数・種数
    • ・再生した森林の影響を受ける湿原・河川における動植物の個体数・種数
    • ・丘陵林による被覆、湧水量の復元状況(目標となるモデルとの比較)
  4. 生産が行なわれている森林での配慮・修復
    • ・再生した森林の影響を受ける湿原・河川への土砂流出量

<<もどる   「はじめに」にもどる   すすむ>>



メインコンテンツ
 
環境省 釧路自然環境事務所 〒085-8639 釧路市幸町10-3 釧路地方合同庁舎4階
TEL:0154-32-7500 FAX:0154-32-7575 E-Mail:NCO-KUSHIRO@env.go.jp(@を半角に変換してお送りください)
 
 
COPYRIGHT 2005 環境省 このサイト内の文章・画像の著作権はそれぞれの作成者に帰属します。無断利用を禁じます。